- AH調査報告
- 2016/10/03
1年間の主婦の歩く距離が6年前と比べ122km短縮 「2016年住宅傾向調査」について
株式会社アキュラホーム住生活研究所(所長:伊藤圭子)は、アキュラホーム(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:宮沢俊哉)が2015年に全国で手がけた住宅のうち100棟(※1)の住宅の間取りについて調べたところ、家事動線(※2)の短縮に加え、洗面室の面積拡大による収納の充実など、主婦の家事ラクに大きく貢献する傾向が見られました。これは、2014年4月に発売した「住みごこちのいい家」による提案が寄与したものと考えられます。(家事動線については昨年発表した「アキュラホーム2014年住宅傾向について」と同様に調査したものです。)
『住みごこちのいい家』による提案で、
家事動線の短縮が加速化
主婦の歩く距離が6年前※3と比べて122km減少?!
主婦が家事をする際、1日で最も行き来することが多いと言われる「キッチン⇔洗面室」の距離を調べたところ、2015年は平均で3.63mであり、前年と比べて0.84m短くなっていることがわかりました。その場合、30代の日本女性が1日に歩く歩数は6,919歩、歩幅を70cm(※4)と言われていることから、1日の家事時間(平均4時間33分)の割合が1日の約19.0%と仮定して計算すると、家事において主婦が1日に歩く距離は計算上では約920.2mとなります。
2009年の家事動線の距離は5.72m、2015年の家事動線の距離は3.63mであることから、約36.5%短縮していることになります。よって、2009年から比べると、家事における歩く距離が1日で約335.9m短縮していることになります。これを年間におきかえると、約122.6km(※4)短縮したことになります。
また、「キッチン⇔洗面室」の距離は、平均で5.72m(2009年)、4.47m(2014年)、3.63m(2015年)と推移しており、2009年から2014年の6年間と比べて、2014年から2015年の1年間では、3倍以上のペースで「キッチン⇔洗面室」の距離の短縮が加速していることになります。
忙しい主婦が増えて動線の工夫が
いっそう進む
洗面室に入る複数動線が増加中
「キッチン⇔洗面室」の距離の短縮の背景にあるひとつの要因として、動線の工夫が挙げられます。
その例として、2ヶ所から洗面室に出入りできる間取りプラン(廊下とキッチンから洗面室に入れるなど)の採用率が、2009年には21%だったものが、2014年には25%に、2015年には38%に増えています。
忙しい主婦は掃除をしながら洗濯機を回し、調理のかたわらで洗濯物を干したりしなければなりません。その中で主婦の動線、機能性が重要になってきます。洗面室に一か所から出入りする動線では非効率で、2方向からアプローチできれば効率が高まります。
フルタイムで働く忙しい主婦が増えている
こうした変化が起こっている背景には、働く主婦が増えているという実情があります。
1980年(昭和55年)には専業主婦世帯1114万世帯に対して、共働き世帯は614万世帯だったのが、1997年(平成9年)には専業主婦世帯が921万世帯に対して共働き世帯が949万世帯と逆転。2015年(平成27年)では共働き世帯が1114万世帯で、専業主婦世帯が687万世帯と、この35年間でほぼ正反対の関係になっています(※5)。そのため、家事を効率的に進めることが重要になってきています。
洗面室の大きさは6年で2割近く拡大
洗面室の大きさは拡大傾向
洗面室の平均面積は、2009年には4.44㎡(1.34坪)だったのが、2014年には4.93㎡(1.49坪)、2015年5.22㎡(1.58坪)と拡大してきました。7年間で2割近く(17.6%)も大きくなっています。一方で、かつての主流だった1坪サイズの洗面室が大幅に減少しています。2009年には57%と6割近くであったのが、2014年には46%に,そして2015年には32%まで減少しています。洗面室の大きさが拡大している傾向にあり、洗面室の役割、重要性が見直されています。
『住みごこちのいい家』の提案の一例として、
洗面室の収納を標準に
住まいの水廻りの中でも、洗面室はキッチンや浴室に比べて、こだわりが低い傾向にありました。
しかし洗濯物やバスタオル、場合によっては着替え用の子供の下着やパジャマなど、洗面室に収納しておきたいものは数多くあり、収納する場所がきっちりと確保されていない場合、使い勝手の悪い洗面室になりがちです。
アキュラホームの「住みごこちのいい家」では、洗面室に幅455㎜、高さ1.9mの収納、上部の棚などを標準仕様としています。洗面室の収納を充実させるため、面積を広げることで、住まい手の満足度向上につながっています。
コミュニケーション重視の志向に変化なし
「対面キッチン」が9割前後を維持
キッチンは、ダイニング側を向いて炊事をする「対面キッチン」が主流の流れには、大きな変化はないようです。ふだんは子どもたちを見守りながら調理をすることができ、また来客があったときにはコミュニケーションをとりながら料理や後片付けができるのが人気の理由のようです。対面キッチンの採用率は、2009年が88%で、2014年が93%、2015年が95%とほぼ対面キッチンが当たり前の時代になっているといっていいでしょう。
「オープンキッチン」はやや減少傾向、
デザインより機能性が重視される傾向に
「対面キッチン」でも一部に壁を設け、ダイニングから手元が見えにくいタイプと、完全にオープンのタイプがあります。厳密にいえば、完全にオープンなタイプを「オープン型」、一部に壁のあるタイプを「壁立ち上げ型」にわけることもできます。
そうしたところ、「壁立ち上げ型」は2009年の64%から、2015年には78%に増えているのに対して、「オープン型」は25%から17%に若干減少しています。
この背景には、オープンキッチンは油の飛び、汚れなどの影響を受けやすく、特に来客があったときにはあまり見られたくないといった傾向があります。デザインより機能性が重視され、“家事ラク”が好まれるような傾向も、やはり忙しい主婦が増えていることと関係しているのかもしれません。
※2 炊事や洗濯など家事をする時に人が動く経路のこと。(住宅用語大辞典)
※3 2009年と2015の比較
※4 日本女性(30歳~39歳)の平均身長158cm、平均歩数6,919歩(「平成25年国民健康・栄養調査報告」より)、共働きの主婦の一日(平日)の家事時間は、平均4時間33分(「平成14年総務省統計局 夫と妻の仕事・家事時間」より)、小数点第一位以下を四捨五入して計算。
※5 総務庁発表資料「労働力調査特別調査」「労働力調査」より
調査概要
上記3点を踏まえて、出した調査の結果をまとめたものである。