• コミュニティづくり
  • 2018/03/16
これからの住宅地を考える会主催シンポジウム
日程2018/03/16
場所すまい・るホール

シンポジウム
「暮らしを変える『コミュニティ』の条件」
開催報告

少子高齢化が急速に進む日本では、地域コミュニティの維持が課題のひとつとなっており、活気あるコミュニティと資産価値のある住宅とはどうつくられるのか、さまざまな意見が交わされました。


なぜ、今コミュニティなのか?
住生活研究所 伊藤圭子所長

単身世帯や高齢者世帯、昼間の大人不在世帯の増加でコミュニティの構成員が変化している今、介護や子育て、防犯や防災、環境対策に対応するには住宅地内のコミュニティが重要となります。そのため、住宅の資産価値は暮らしを守る「環境維持力」で変わると指摘、これからは住みごこちや資産価値の維持という視点から、住民間のコミュニティが良好な住宅地が選択される時代になると述べました。また、アキュラホームが開発した住宅地、浦和美園E-フォレスト、若葉台ヒルサイドテラスについても紹介しました。


提言!暮らしを変える「コミュニティ」の条件 ~中間領域とマネジメント~

コミュニティが自発的に醸成される仕掛けを組み込んだ住宅地、コミュニティ活動を活性化する支援方法など、さまざまな提言がなされました。

連続する空間と時間をデザインする
アルセッド建築研究所 代表取締役 所長
三井所清典委員

住まいという私的領域と公園などの公的領域が直接つながると衝突や不具合が起こります。そこでそれぞれに中間領域(コモン)を設けて人の交流を生み出すことで、多様な行動や活動を促すことが可能になります。日本建築の特徴である土間や取り外し可能な建具を活用することで、交流スペースとなる中間領域をつくる仕掛けとなり、多様なアクティビティを生み出し、コミュニティの活性化に役立ちます。


トータルにまち空間を設計する
アーバンセクション 代表取締役
二瓶正史氏

暮らしやすい住環境と美しいまちなみ景観を獲得するには、土木工事、建築工事、造園外構工事の協働によるトータルなまち空間づくりが必要であり、トータルに考えることで、良好なまち空間が形成できることを実例とともに提示しました。


維持される環境と保全される資産価値
横浜市立大学国際教養学部 教授
齊藤広子氏

まちづくりに対する考え方を大転換すれば、価値が上がる住宅地をつくることができる。自らプロデュースした住宅地「リビオ姫路大津 ブルームガーデンのぞみ野」(兵庫)を例に挙げ、既存の市街地の常識を覆す10の法則を紹介しました。


住宅地計画の系譜と新たな挑戦
市浦ハウジング&プランニング 代表取締役社長
川崎直宏氏

おもに住宅地マネジメントの視点から、「コモン」という中間領域は、気候、景観、利用のつながりがコミュニティにもたらし、それらを維持するためには、ルールや合意、ビジネス化などを考えていくことが必要で、実践的チャレンジのひとつとして、若葉台ヒルサイドテラスの実例を交えながら解説しました。


変わる暮らしの中で重要性を増す
京都大学名誉教授・京都美術工芸大学教授
髙田光雄氏

社会、環境、文化という視点から暮らしの変化が語られ、それらに対応するには「生活の一部の共同化」「エネルギー利用の共同化」「生活文化を共同で継承」することが重要と提言しました。
そのためのしかけとして、同形で大きさの異なる容器などを指す「入れ子」を境界デザインに適用することで、住まいを「閉じつつ、開く」「開きつつ、閉じる」ことが可能になると語りました。


パネルディスカッション
「暮らしを変える『コミュニティ』の条件」

「まちづくりは初期設定が重要で、住民自らがまちを守る体制づくりが大切になります」(齊藤委員)
そのためにも「ルールづくりと合意が大切になります」(川崎委員)
「協定をつくるだけでなく、きちんと管理しなければ機能しないのではないでしょうか」(二瓶委員)
「まちの美観や住環境を改善する国土交通省の街なみ環境整備事業について言及するとともに、法制度の改革も必要」と語りました。(三井所委員)

最後に、髙田委員は「コミュニティは奥深いテーマ。これからも多角的な議論や提案をしていきたい」と締めくくりました。

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