- AH調査報告
- 2017/02/09
玄関収納(シューズクローク)設置率が8年で2倍超に増加傾向
和室(客間)から畳コーナーへ、用途に変化
「2017年住宅傾向調査」について
株式会社アキュラホーム住生活研究所(所長:伊藤圭子)は、アキュラホーム(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:宮沢俊哉)が2016年に全国で手がけた住宅のうち100棟(※1)の住宅の間取りについて調べたところ、玄関収納(シューズクローク)(※2)の設置率が2009年から2016年の8年で35%から74%に増加傾向にあることが分かりました。
また、和室・畳コーナーのある間取りの割合は増加傾向にあり、一方で家事動線(※3)の長さ、キッチンの種別に関しては昨年と比較し、ほぼ横ばいの傾向となりました。(昨年発表した「アキュラホーム住生活研究所2016住宅傾向調査」、一昨年発表した「アキュラホーム2014年住宅傾向について」と同様に調査したものです。)(※4)
玄関収納の設置率が2倍に!
玄関収納の設置率が8年間で35%から74%と増加傾向にあります。
家族の靴はもちろん、傘、ベビーカーやゴルフバック、アウトドア用品や子供の遊び道具なども収納することができ、家の中には持ち込みたくないが外に置いておきたくないものなどを収納できる便利な収納空間です。この結果の背景には3つの要因があると考えられます。
1.家事の合理化志向
近年では働く主婦(※)が増えており、家事を効率的に進めることが重要になってきています。間取りの中でも、玄関脇の玄関収納(シューズクローク)で靴を脱ぎ、コートや傘を置き、そのまま家に出入りできる設計が増えています。玄関収納(シューズクローク)があれば玄関に脱ぎっぱなしの靴が散らかったり、傘の置き場がなくなることもなく、急な来客時でも常に玄関をきれいに見せることができます。
また、ベビーカーのように毎度折りたたみが必要なものでもそのまま収納、使用することができるため、家事ラクにつながる一つの間取りの工夫であるとも言えます。
(※)働く主婦について
1980年(昭和55年)には専業主婦世帯1114万世帯に対して、共働き世帯は614万世帯だったのが、1997年(平成9年)には専業主婦世帯が921万世帯に対して共働き世帯が949万世帯と逆転。2015年(平成27年)では共働き世帯が1114万世帯で、専業主婦世帯が687万世帯と、この35年間でほぼ正反対の関係になっています。
2.住まい手の暮らしの多様化・趣味の充実
ライフスタイルの多様化により、住まい手の趣味が充実してきています。スキー、スノーボードや自転車などのアウトドア用品、バーベキュー用品、子供の遊び道具(野球、サッカー、テニス、三輪車)なども収納しておくことができます。玄関に隣接するため、外からの出し入れなども手軽にすることができます。
3.デザイン・防犯意識の向上
住まい手の外観デザインへのこだわりや防犯意識の向上から、外に物を置きたくないという要望が増えています。以前は物置などを庭の一部に置くことも多かったですが、外観のデザインも悪くなってしまいます。物置に収納されていたタイヤやすだれなどの季節用品もシューズクロークのような収納があれば不要となり、外からの見栄えも良くなり、防犯上も安心です。
和室・畳コーナーのある間取りの割合は増加傾向、一方で用途に変化か
和室・畳コーナーのある間取りの割合は、2009年:62%、
2014年:63%、2015年:68%、2016年:71%と増加傾向であることが分かりました。近年のマンションの間取りでは和室、畳コーナー共にほとんど見かけることがなくなりましたが、新築戸建を建てる人はできれば和室、畳コーナーがほしいという傾向にあるようです。さらに6帖以上、6帖未満であるかを調べたところ、以前は6帖の和室が主流であったのに対して、近年は3~4.5帖が主流となってきています。この結果の背景には2つの要因があると考えられます。
1.用途・時代の変化
以前は和室=客間という考えが主流でしたが、近年ではそのような考えが減ってきています。国立社会保障・人口問題研究所の調査(※5)によると、2001年に親と近居している割合が23.9%であったのに対し、2011年には30.4%に増えていることや、出生地と現住地を比較した時に、最も高いエリア(北海道)で80%以上が、最も低いエリア(東北)でも約60%以上が出生地と現住地が同じであることから、親や親戚が家に遊びに来ても、泊まる必要がなくなってきていると言えます。
その他にも、共働きが増え、来客回数が減っていることや、子供の家庭訪問でも教員は家の中に入らないというようなルールができるほど、時代が変化してきているなどの理由があげられます。年に数回使うための客間としての和室ではなく、住まい手がくつろいだり、子供を寝かしつけたり、洗濯物をたたむ毎日の暮らしの空間として畳コーナーを設置する人が増えています。
2.優先度の変化
客間としての使用用途でなければ6帖の広さは必要なくなります。年に数回のための客間のような空間ではなく、毎日使う空間をより広くしたり、収納を充実させることで、日常の住みごこちがよりよくなります。シューズクロークのような収納スペースが増加傾向にあることや、洗面室に収納を設けることにより、1坪サイズの洗面室が減少し、洗面室も拡大傾向にあるように、非日常の暮らしよりも、日常の暮らしをより豊かにするための間取り設計に変化してきているのかもしれません。
家事動線はほぼ横ばい
「キッチン⇔洗面室」の距離は、2016年は平均で3.92mとなりました。5.72m(2009年)、4.47m(2014年)、3.63m(2015年)と推移しており、昨年と比較すると、1年間で平均0.3mの増加となりました。30cmの増加は女性の約半歩分ということから、ほぼ横ばいという結果となります。
キッチンの種別の割合もほぼ変化なし
キッチンは、ダイニング側を向いて炊事をする「対面キッチン」が2016年は94%の割合を占めました。2015年は95%、2014年は93%、2009年は89%ということで、「対面キッチン」が主流の流れには、大きな変化はないようです。
(※2) 玄関収納(シューズクローク):玄関に隣接し、靴を履いたまま出入りできる収納空間。
(※3) 炊事や洗濯など家事をする時に人が動く経路のこと。(住宅用語大辞典)
(※4) 「アキュラホーム住生活研究所 2016住宅傾向調査」:https://www.aqura.co.jp/company/news/pdf/160816.pdf
「アキュラホーム2014年住宅傾向について」:https://www.aqura.co.jp/company/news/pdf/150303.pdf
(※5) 出典:2011年社会保障・人口問題基本調査 「第7回人口移動調査報告書」国立社会保障・人口問題研究所より
http://www.ipss.go.jp/ps-idou/j/migration/m07/mig07report1.pdf
調査概要
上記4点を踏まえて、出した調査の結果をまとめたものである。